東海道 その4/大阪 心斎橋 「とんかつ 大喜」2019年9月26日〜厚さ3.5cm、300gの衝撃

2020年4月1日

新大阪に着いた。喉が渇いていたが、ペットボトルの綾鷹を飲むのを我慢した。先週行けなかった「とんかつ大喜」。今日こそは何としても行くべく、朝から18時の新幹線を予約し、意地でも仕事を終わらせた。

さあ、3.5cmの超厚切りとんかつが私を待っている。2016年に開店して3年で人気店になったという、勢いのある店のようだ。

心斎橋からややこしい乗換を経て長堀橋。たどり着きましたとんかつ大喜。さあ、と思ったら満席・・・残念。

暫し外ののベンチで待つことに・・・

雰囲気のある店構え・・・外には小さなベンチ
じっくり火を通してくれるのはちょっと安心・・・

二人組が出て行ったので、よし、とばかりにドアを開けると「ちょっと用意しますのでお待ちください、声をかけますから。」とのこと・・・もう一度外に出た。

・・・1組、もう1組とお客さんが帰っていく。もう入れるかと思うが声がかからない。まだかなあ・・・最初の二人組が出て行ってからもう10分以上経ってるよ・・・

暑さのピークは過ぎたとはいえ、まだちょっと蒸し暑い。用意できてなくても中で待たせてくれればいいのになあ・・・

計10人を超えるお客さんが帰って、ようやく主人から声がかかった。カウンターに案内された。店に入ると先程は一杯だったカウンターには誰もいない。奥のテーブルも空いている。

そうだよな・・・10人以上帰ったんだから・・・こんなに席が空いてるなら早く店に入れるだけ入れてくれてもよかったんじゃないか?・・・それに本音を言えば荷物が多いので、これだけ空いているなら奥のテーブルに座りたいが・・・

でもまあ人気店ということだからすぐ混み出すかも・・・と思い直してカウンターに座った。

カウンターに座ると、膝の前にフックがあり、そこに荷物を掛けるように教えてくれた。大きめの荷物も無理なく掛けられる・・・これは便利だ。最初に不満を並べたが、観光客対応がちゃんとできている。

どうも私は客観的にみるとうるさい客かもしれない・・・ちょっと反省・・・

店内はこぎれいでカウンターの木の手触りもいい。さて、メニューである。

このど迫力・・・

「特選ロース 超厚切り」・・・店に入る前から決めてきたとはいえ、300gはちょっとやり過ぎか?と一瞬弱気になった。

以前は家内に「フードファイターになったら?」と言われる程の大食いだったが、近年すっかり食べる量が減った。とは言え、他のブログで見た300g、3.5cmの写真、その迫力が忘れられない・・・200gだと3分の2になってしまう・・・300だよな、やっぱり・・・ビールは例によってとんかつが来てから頼むとして300gを注文した。

学生の頃から食のバイブルとして長らく愛読した漫画、「美味しんぼ」の中で主人公の山岡さんが「とんかつの厚さは5mmが限度、それ以上は肉と衣のバランスが崩れる」と言うシーンがあった。いくら山岡さんの言葉でも、それだけは納得できない。私は圧倒的に厚切り派である。

世界各国の塩が並ぶ
岩塩(智)と書いてある・・・? ググるとチリのことでした

目の前に20種類以上の塩が並んでおり、日替わりで提供されるようだ。本日の塩はチリ産の岩塩。そして辛子ベースのソースととんかつソースの3種類で味わう。

塩の棚や店内の写真を撮っていたが気がつくと「 Do not take a picture of the kitchen 」と貼紙がしてある。厨房が目の前なので、さっき主人が席を外した時に写真を撮ろうかと思ったが撮らなくてよかった。

なんといっても厚さ3.5cmなので火が通りのに時間がかかる。写真を撮るのも終わり、しばらく待っていると60前後に見える紳士がカウンターの私の近くに座った。

「特選ロース200、ご飯はちょっとでいいです。」どうやら常連さんのようである。うーん、そうだよな、200gでもとんかつとしてはかなり大きい。300はやり過ぎか?しかもご飯もがっつり普通に頼んでしまった。またちょっと不安が出てきた・・・

紳士は続けて「あと瓶ビール、ビールはとんかつと一緒で。」

そうそう、ビールはそうやって頼む手もあるよ、知ってるよ・・・ただ、たまに喫茶店で、「コーヒーはパンと一緒に」って言ってるのに先にコーヒー持って来られる場合がある。それが頭によぎるから、とんかつがくるまでビールを注文できないのだ・・・

店の人が間違えてビールだけ先に持ってきても、瓶ビールなら後で持ってきてください、って言えるが、生だとどうしようもない・・・いや、瓶も栓を抜いて持ってくるから同じことか・・・そんなどうでもいいようなことを考えていると・・・

「おまたせしました。」

・・・デカい・・・

圧倒的な存在感にちょっと怯む・・・

しかし同時にこの断面の美しさ、火の通り具合はどうだ・・・厨房でタイマーの音が聞こえていたので、しっかり計算して火を通しているのだろう。

面白いのは断面が均一にピンク色ではなく、上の脂身の手前に一部だけ赤色の強い部分があるのはなぜだろうか?紹介写真で見た時もそうだったので、たまたまではない筈。脂身の層に挟まれた部分のようなので、ここだけ火が通りにくいのかもしれない。

こういう時私は技術屋なので、既に脂身と赤身の熱伝導率がどうの・・・と面倒臭いことを考え出している自分に気づく・・・何れにしても、これは安心して食べられると思う。

この断面を見せている一切れをまず塩で一口。常に真ん中から攻めるのが私の流儀である。 口の中に圧倒的な肉感が広がる。旨い!・・・少し「黒かつ亭」よりは脂身が強い。脂身には甘みがある・・・本当に旨い・・・

超厚切りでも食べやすいよう、とんかつの幅を細く切っている。とんかつ一切れの幅が厚みの半分ぐらいしかないので、普通のとんかつと幅と厚みが逆転して不思議な感じがする。

普通、とんかつを食べるとき、私はカツのカットしてある断面を箸でつまみ、衣の面に歯をあてて噛み切るが、この場合はカツの一切れを90度回転させてカツの衣面を箸でつまんで断面に歯を当てる事になるのが面白い。

衣はサクサクではなく、カリッとした硬い感じで油を吸っている。やはり時間をかけて揚げるため、どうしても衣は固くなるのだろう。肉が厚いのでこの硬い衣はバランスとして悪く無い。

右から塩、辛子ベースのソース、とんかつソース

塩の次は辛子ベースのソースで食べてみる。辛子風味はするが。辛味はほとんどない。これはこれで旨いが、一番合うのはとんかつソースだ。肉のボリュームと油を吸った硬めの衣を受け止めるパワーがある。

ちょっと飲んでしまったが・・・ビールは嬉しいプレミアムモルツ、これも店主のこだわりか・・・

3分の2ほど美味しく食べ進めたところで異変が起こった。

今まで楽しんできた肉の脂と衣の油が、突如私の敵に回った。油分を採りすぎた時に特有の気持ち悪さがこみあげてきた・・・箸が止まった・・・

・・・とんかつのせいじゃない。私のせいだ・・・

言わんこっちゃ無い。いつまでも若いつもりで300gなど注文するからだ。普通のとんかつが120g、大きいもので150g、180g。隣の紳士も200gでご飯を減らしたじゃないか・・・バカなの?

最後まで美味しく食べられないなんてお店に肉にも失礼だ。なんたる失態・・・こんな意識低い癖にとんかつでブログを書こうなんて・・・

いくら自分を責めても食欲は戻って来ない・・・しかし残すという選択肢は存在しない。昭和生まれの私にとって自分で注文した食べ物を残すのは犯罪を犯すのに匹敵する罪悪感がある・・・

出口の見えない苦境から救ってくれたのは、意外なことにご飯だった。

まだビールが少し残っていたが、箸がどうにもとんかつに向かわない・・・仕方なくご飯を一口食べてみた。

このご飯は・・・なんでこんなにべちゃっとしているんだ?・・・美味しくない・・・普通外食でこんなべちゃっとしたご飯はお目にかからない。このとんかつ道中で訪れたどの店もご飯は普通に美味しかったのに・・・失敗したの?

しかし、大阪の有名店で失敗もないだろうが、この炊き具合はどうしたことだろうか?

そんな文句を心の中で言いながらご飯を一口、二口食べた。すると・・・不思議なことに箸がとんかつに向った。

食べられる!ついさっきまでぴくりとも動かずにダウンしていた食欲が、カウントナインで不意に立ちあがってきた。

とんかつを美味しく感じる・・・普段ならとんかつが美味しいのは当たり前だ・・・しかしついさっきまで全くとんかつを食べる気になれなかったのに・・・私は心の底から驚いていた

・・・これは・・・ご飯の力?・・・

まさかご飯の炊き具合のせいではないだろう。ご飯自体が、それだけとんかつに合うということなのか?・・・昔から変わらない、とんかつ、キャベツ、ご飯、味噌汁・・・このラインアップ・・・いやキャベツはこの際関係ないか・・・

ご飯、ご飯だ・・・ご飯にこれほどの力があったとは・・・

新たな発見に心が震えた。なんと、とんかつ道の奥深いことか・・・

相変わらずお腹は結構膨れている感じはあるのだが、順調にとんかつは減っていった。 もう一つ新たな発見もあった。塩である。

本日の塩として出されたのはチリ産の岩塩だったが非常にキメの細かいパウダー状の塩だった。この塩にとんかつをチョンと付けると、キメが細かい分かなりの塩が付く。付きすぎるのだ。塩自体の味はきっと美味しいのだろうが、これではとんかつが塩辛くなってしまう。

適度な塩加減にするには、一旦箸に塩を付けて、それをとんかつにまぶすなどのテクニックが必要になる。

そんな面倒な事いちいちやってられない・・・普通にとんかつを塩に付けて食べるにはもう少し粒の粗めの塩の方がいい。他の人のブログを見ると、この店では塩を選べるらしいので、粗めの塩を自分で選ぶのがいいかもしれない。

ご飯のお陰で完食。後半はまた美味しく食べられたが、今回のメニュー選択は私の完全なミスだった。せっかく美味しいとんかつを出してくれた店主に申し訳ない。

私が食欲減退と格闘している間にお客さんは続々入っており、店内はまた満席になっていた。欧米系、アジア系のお客さんも多い。やはり人気店なのだ。

この店には近々再訪しなければ・・・次回は200gにして、途中躓くことなく、最後までおいしくたべられるようにしよう・・・あ、でも「黒かつ亭」は220gで最後までおいしく食べられたよね・・・250でもいけるんじゃ?

・・・・・・いや・・・200gにしておこう。

帰るときには行列ができていた
ごちそうさまでした

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