東海道 その3/名古屋 名古屋駅 「矢場とん 名古屋駅名鉄店」2019年9月19日〜矢場とん人気は伊達じゃない

2020年11月20日

「矢場とん」に来てしまった。名古屋人でとんかつのブログを始めた以上避けては通れないかなとは思っていたが、こんなに早いとは・・・

明日の会議のため、今日は大阪に前泊。心斎橋の「とんかつ大喜」に行こうと思っていたのが、急ぎの業務が入り、終わった時には夜8時。仕方ない、名古屋駅でとんかつだ。

早速ググってみるとサンロードにある「とんかつのさくら亭」の写真が旨そうだった。しかしラストオーダー8時半で間に合わない・・・

他店も軒並み閉店間近の中、名鉄の「矢場とん」が11時までやっていたというのが今日「矢場とん」に至った経緯である。

名古屋人はあまり「矢場とん」にいかない。いや、別に調査したわけではないが、私の周りの人から、美味しい店ということで「矢場とん」が登場したことはない。昔からある店であり、もちろんまずい訳ではない。名古屋に住んでいれば、一度は食べたことがある人が多いだろう。

もともと、やたら面積は大きいが厚みは薄い、「わらじトンカツ」のボリューム感と,しゃびしゃびの味噌ダレという個性で有名になったが、どちらかといえば大衆とんかつ店という位置付けだったと思う。私も学生の頃一度食べたが、今に至るまでリピーターになっていない。

それにも関わらず近年の「矢場とん」人気はどうした事だろうか。私も名古屋駅で昼食という時に、久し振りに「矢場とん」に行ってみるかと思ったことが何度かある。しかしいつも行列。正直並んでまで食べたいとは思わないので結局行かずじまい。

数年前に高級店揃いのイメージがある松坂屋南館10階で蓬莱軒の隣に出店したときには違和感を感じたものである。

さて、名鉄百貨店本館9階の「矢場とん 名古屋駅名鉄店」である。午後8時半、流石に並んでる人はいないが、貼紙に普段の行列の様子が伺える。そしてお馴染みの豚のキャラクター、横綱豚と言うらしい。

少なくとも10分以上は並ぶのね・・・
横綱豚だそうです

「矢場とん」に限らず、とんかつ屋で豚のマスコットキャラクター、焼肉屋で牛のマスコットキャラクターを採用する店が時々ある。しかし、私はそれがあまり好きではない。

今から肉を食べる対象の動物をかわいく見せられても、なんとなくげんなりするのは私だけだろうか?沖縄出身のアーチスト、Coccoさんの「My Dear Pig」を思い出してしまう。それに豚でも牛でも、一流店ではそういうキャラクターを見かけない気がするのだが・・・

余談が過ぎた。店に入るとさすがに席は空いている。私が座った隣に中国人のカップルがいた。仲良く味噌カツ丼の写真を撮っているのが微笑ましい。

メニュー選択で迷った。お馴染みのわらじかつの他に、人気NO1とあるリブとんかつ定食がある・・・これにしようかな・・・

・・・あれ?黒豚もある・・・

鹿児島産黒豚ロースとんかつ定食が2700円!ロースとんかつ定食が1300円なので、倍以上だ。それどころか「黒かつ亭」の特上ロースかつ定食よりも大分高い・・・名古屋なのに・・・東京の都心も都心、東京駅にある名店よりも値段が高いってどういう事?

まあしかし、とんかつに妥協しないと決めたので、値段のことはさておくとして、やはり「黒かつ亭」などと比較するためには、黒豚でないとフェアじゃないかな・・・

いや、「黒かつ亭」はそもそも黒豚が売りの店であり、黒豚のとんかつをお客さんに自身を持って提供している。

「矢場とん」は味噌カツが売りであり、黒豚が売りではない。やはりその店のポリシーは、一押しメニューや人気No1のメニューに現れていると見るべきだろう・・・よし、ここは人気No1のリブとんかつ定食だ。そして追加でビールを頼もう・・・

時刻は8時半過ぎ・・・お腹が鳴る・・・となりのカップルは談笑しながら味噌カツ丼を楽しんでいる。やっぱり中国の人が食べても美味しいのかな?それともガイドブックに載っているから来ているだけなのか・・・

昔、学生最期の春休みにバックパッカーでヨーロッパを回ったが、その時は「地球の歩き方」を頼りにそこに載っている店を訪れると、店のお客は日本人ばかり・・・ということがよくあった。

今はスマホでいくらでも情報検索できるから、観光客は日本人以上に日本の情報に詳しいとも聞く・・・「矢場とん」はそういう情報サイト対策をしてるのかな・・・などと考えていると客も少ないせいか、比較的早くとんかつがやってきた。

お、やった!味噌ダレがかかっていない・・・これなら、まずは素顔のままのとんかつを味わえる・・・

「リブとんかつ定食です。」お箸、ご飯、味噌汁、と丁寧に並べるお兄さん・・・最後にとんかつのお皿を置いた・・・と思うとその手は、そのまま動きを止めず、緩やかに、且つしなやかに、左手のお盆の上の容器を持ち上げ・・・

全てはほんの数秒の出来事だった。すっぴんの飾り気のないとんかつが見る間に茶色に染まった。彼はこの「矢場とん」で何十回、あるいは何百回と繰り返したであろう右手の動きを滑らかに、かつ容赦なく完遂した。私が一言も挟む間も無く・・・

茶色に染まったとんかつ

粘性の無い味噌ダレはキャベツのエリアまで侵食していた。あーあ・・・

「味噌ダレ別にしますか?」とか、あるいはせめて「味噌かけていいっすか?」とか一言聞いてくれても・・・

いや、ここは「矢場とん」だ、味噌ダレありきの世界なんだ。最初に味噌がかかってなかったのがちょっとしたサプライズだっただけで・・・もともとメニューの写真だって全部のとんかつに味噌かかってるし・・・

気を取直してとんかつと向き合う。前回の「とんかつ 田」の経験から一切れ横向きにして断面を見てみる。

赤い・・・

やられた・・・やはり火の通りが甘い・・・「とんかつ 田」に近い赤色だ、しかも始末に悪いことに味噌がかかってしまっている。もうちょっと揚げてもらおうと思っても、この状態のとんかつを油に入れたらどうなるか想像したく無い・・・

それでも火が通っていないと言えば、おそらくお店は新しいとんかつを揚げて出すだろう・・・私は基本的には言うべきことは言うほうだが、しかし今日はもう時間も遅く、これからまだ大阪に行かなければいけない・・・これ以上時間を取りたくなかった。

仕方無い、このまま食べよう・・・「とんかつ 田」でも特にその後具合が悪くなったわけでは無い。海外へ行っても一度もお腹を壊したことがない私だ、多分大丈夫だろう・・・

食べてみると、味噌ダレのお陰で血の匂いを感じることはなかった。「矢場とん」の味噌ダレは、やや甘い味付けで見かけの色から想像するほど味は濃く無い。肉は普通に柔らかいが、ややパサつく感じで肉自体の味は淡白な方だ。塩で食べることはできなかったが、塩で食べるとおそらく肉のパサつきが気になるのではないか?

甘めの味付けの味噌ダレにはこういう肉の方が合うのだろう。味噌ダレの水分と甘味が、肉の少しパサついた食感と淡白な味をうまく補完している。全体としては美味しいとんかつだと思えた。

今まで偏見を持って見てきたが、これはこれで一つのバランスのとれた味に思える。肉自体の味に魅力を感じる私としては、とんかつとして好みの味とは言えないが、人気店になったのは宣伝の力だけではない・・・火の通りが甘かったのは見過ごせないが・・・

色々なとんかつがある、大阪には変わり種とんかつで有名な「マンジュ」という名店もあるようだ。興味はあるが、今のところは純粋に美味い肉を厚切りにし、適度に火入れをしたとんかつを求めている自分がある。

まだまだとんかつ道中は始まったばかり・・・自分も豚の銘柄もよく知らない初心者であり、自分の感覚だけを頼りに歩いているところだ・・・しかしだからこそ面白い。これからもとんかつの旅を続けて行こう・・・改めてそう思った1日だった。

ごちそうさまでした

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