北国街道 その2/金沢 北安江「本家とんとん亭」(再訪)2021年1月22日~スーパーとんかつ定食に再挑戦
1年数ヶ月に及ぶミッションが昨年9月に終了し、頻繁に東京、大阪に行くことは無くなってしまった。ミッション後半はコロナ禍で出張がめっきり減ってしまったが、ブログを開設し、多くのとんかつ店を訪問できたことは有難いことだった。
昨年末に金沢の仕事が入ったので、今後数回は金沢を訪れることになった。このご時世ながら、不要不急ならぬ有要緊急の出張なので止むを得ない。
新ミッション最初のとんかつは、前回訪問した「本家とんとん亭」だ。実は昨年12月に既に2度金沢出張があったが、ゆっくり昼食を採る時間がなく、今回は満を持しての訪問である。
駅から10分程度の道のりだが、昨年末に大雪が降り、1月も前半に何度も雪が降った名残で、歩道にかなり雪が残っている。
キャスターバッグを引きながら歩くのに苦労しつつ、15分ほどかけて「本家とんとん亭」に辿り着いた。
「何人!」親父さんの威勢の良さは相変わらずだ。「一人です」
「えー、左奥!」
お、この前の席とは逆だ。と思いつつ、お姐さんに案内されて左奥方面に向かったが、何故か途中で方向を変えて右奥へ・・・結局前回と同じ席に着いた。あれ???
まあ席に拘るわけではないので、それはそれとして、メニューだ。
今回は既にメニューを決めている。「スーパーとんかつ定食 超厚切り〈特大〉」だ。
店の人に「300g以上」と言われたボリュームに気後れし、午後の仕事に差し支えるのでは?と考えて頼むことができなかった前回・・・
仕方なく「250から300g」という「スーパーとんかつ定食〈大〉」を注文したが、それが心残りであり、次は必ず〈特大〉を食べようと思っていた。
今日は午後1時半から2時間ほどの検査をしなければならないが、それが終われば帰るだけだ。2時間乗り切れば、あとは「しらさぎ」で寝ていけばいい。これは気が楽だ。
現地の2時間の仕事のために、片道3時間で往復6時間。ずいぶん無駄だと思うが、今日の〈特大〉挑戦には打って付けだ。
ただ、午後の仕事の心配が無いと言っても、そもそも本当に食べきれるのか?という疑問は残る。しかし私には一つ作戦があった。
前回 「250から300g」 という「スーパーとんかつ定食〈大〉」はサービスのメンチカツサンドを含めても、まだ満腹には至らなかった・・・
1段上の「300g以上」という「スーパーとんかつ定食 超厚切り〈特大〉」 で肉が大きくなっても、メンチカツサンドを食べなければ完食できるんじゃないだろうか?
勿論、出されたものを食べずに残すなどという勿体ないことをするのは、私にとって犯罪に近い。そこでジップロックの登場である。
家から持ってきたジップロックにメンチカツサンドを入れてテイクアウトする。そして帰りの「しらさぎ」でメンチカツサンドをビールのお供にする。
完璧な計画だ・・・
念のため、注文を取りに来たお姐さんにもう一度聞いてみた。
「この〈特大〉は何グラムぐらいなんですか?」
「三百・・・五十ぐらいですかね・・・」
まだ曖昧さは残るが、ずいぶん範囲が絞られた。max350gなら何とかなる・・・
今日のリトライのために考え抜いた計画だったが、一つだけ誤算があった。実は前回食べたのは 「スーパーとんかつ定食〈大〉」 ではなく、〈中〉だったのだが、この時の私は気づいていない・・・
「時間かかりますがよろしいですか?」勿論ですよ・・・
とんかつを待ちながら、ようやく店を見渡した。ランチメニューは,冬らしく「広島産のカキ祭り」が加わっており、これも美味しそうだ。
時刻は11時半頃、店内はまだほとんど人がいない。
注文して約15分、店内を観察するのにも飽き、メールチェックをしていると、お姐さんが皿を両手で持って近づいてくるのが見えた。
皿でかいな・・・近づくにつれて皿はどんどん大きくなり・・・
ついにそれが目の前に置かれた。
な、なんじゃこりゃあ!!(©松田優作)
テーブルの幅いっぱいの巨大な皿に、所狭しと並べられたとんかつの大群・・・今回もついているサービスのメンチカツサンドが小さく見える。
超厚切と謳うとんかつは厚さ3.5㎝。大阪の「とんかつ 大喜」の「特選ロース 超厚切り(300g)」と同じ厚みであり、一切れの幅と長さはそれを上回る・・・
山盛りのキャベツの左に、何故かナイフが差し込まれており、フォークは無い。箸で抑えてナイフで切ることを想定しているのだろうか・・・
呆然と眺めるうち、とんかつの大群の中央に座る丸いカツに気がついた。・・・これはヒレカツか?
「すみません、これは・・・」
「あー、サービスのヒレカツです・・・」
またサービス・・・単に客が驚くのを面白がって主人がやってるんじゃないか?・・・頼んでもいないものを出されても・・・
食べるのも忘れ、意味のない考えが次々と浮かんでは消えていた。ダメだ、戦う前から負けている・・・
戦う?・・・何と?・・・とんかつを食べるのは楽しいことじゃなかったのか?
深呼吸して気持ちを切り替えた。よし、いくぞ!
ようやくとんかつに向きあう。何もつけず、中央付近の一切れにかぶりつく。
柔らかく、且つ厚切りのみっしりとしたかみごたえが心地よい。そしてジューシーな味わいが広がる。旨い!前回同様、旨いとんかつだ。2切れ目、3切れ目は塩、肉に旨みが塩で引き立つ。
そしてとんかつソース。辛口と甘口があるが、私は辛口が好みだ。塩で一切れ、とんかつソースで一切れと食べ進む。皿の左半分を平らげ、サービスのヒレカツに行こうと思ったところで迷いが出た。
ヒレカツもジップロックで持って帰ろうかな・・・ロースかつは完食するべきだが、これはサービスだし・・・
いや、そうすると「しらさぎ」で食べるときに箸も要るし、塩やソースは?・・・面倒だ、止めよう。
覚悟を決めてヒレカツを平らげる。若干肉の臭みを感じるが、柔らかく、旨い。脂身が無い分食べやすい。
よし、後半戦だ。残った右半分のロースかつに向かう・・・
このスーパーとんかつ定食の肉は、かぶりつくとジューシーな感じがするが、そのジューシーさは脂身の味わいである。メニューに究極の霜降りと書いているように、赤みの部分にもかなり脂身が入り込んでいるため、溶けた脂身が口内に広がるのだ。
それはそれで旨いし、とんかつソースによく合う。しかし、脂身が多い分食べ進めるにつれて、くどくなってくる。
後半戦は4切れ。前半に比べ、明らかにペースが落ちていた。
一切れ食べるごとに「ご飯の力」(東海道 その4/大阪 心斎橋「とんかつ 大喜」2019年9月26日参照)を借りながら食べ進めたが、3切れ目の途中で箸が止まった。
・・・食べ始めてから、既に30分・・・
断面を上向きにしたロースかつは既に冷えきっており、脂身も固まりはじめていた。
またやってしまった・・・大阪の「とんかつ 大喜」で大きすぎる300gのとんかつを注文し、完食するのに苦労したとき、最後まで美味しく食べられなかったことを後悔した筈なのに・・・
肉の大きさがはっきり判らないのに、行けるだろうと甘い判断をした自分を責めていた。
しかし、残すという選択肢は存在しないので、再度深呼吸し、ご飯、みそ汁、お新香でくどさを和らげつつ、なんとか残り一切れ半を平らげた。
苦しい戦いだった・・・とんかつを食べる楽しさを後半失ってしまったことは悔やまれる。
時刻は12時半過ぎ。いつもなら食事時間は15分から20分程度なのに、45分も食べていたことになる・・・厚切りを求めるあまり、適量を超えたとんかつを注文するのは止めなければ・・・
あ~、旨い!
「しらさぎ」の車内、エビスのロング缶を飲みながら食べるメンチカツサンドは、前回昼食時に食べたときよりもずっと美味しかった。
「本家とんとん亭」また来よう。
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