北国街道 その1/金沢 北安江「本家とんとん亭」2020年7月16日~メニュー豊富でボリューム満点の人気店
約一年ぶりの金沢だ。昨年は学会で訪れたが、その時はまだこのブログを開設しておらず、北陸と言えば海鮮というありふれた認識で食事をしてしまった。
そのため今回が金沢で初めてのとんかつである。午後から香林坊の方で会議があるので金沢駅近辺のとんかつ屋を探し、見つけたのが「本家とんとん亭」。
本家というからには分家があるのかな?と思ったが、とんとん亭、トントン亭、豚々亭などググると各地で出てくる。だから本家なのね・・・
かなり昔から人気の店のようだ。「予約しないとマジ並ぶ」という書き込みもあった。時刻は11時を回っている。昼食ラッシュにはまだ時間があるが、急ぐに越したことは無い。
Googleマップでは距離感が掴めず、バスに乗るかどうか迷った。金沢駅東口の交通案内所で聞いてみると、親切なお姉さんが教えてくれた。バスはあるにはあるが、本数が少ないので歩いたほうが早いという。やはり聞いてみるものだ。
早足で7~8分でお店に着いた。普通に歩けば10分程度だろう。通りに面して大きな看板が出ている。
道行く人にアピールする根性型の看板をみて、店主の人となりに想いを馳せながら店の入り口へと向かう。奥に駐車場を広くとったロードサイド型の店だ。なかなか立派な店構えである。
11時の開店時間から間もないのに、既にかなり車が停まっている。急いで来てよかった。
自ら頑固オヤジと名乗るところは先程の根性型の看板のイメージにピッタリである。土日はやはり相当混むようだ。
入り口を入ると、いきなり自称頑固オヤジの店主が目に入った。
「何人?!」威勢のいい声が飛んできた。
「一人です。」
「はい一名!えー、あ、右奥っ!」
女性店員に案内されて席に着いた。和風で落ち着いた雰囲気の店だ。店内の照明は落とし気味で、各テーブルの上にスポットライトがあるので卓上は明るい。
さて、メニューだ。お、黒豚だ。天皇杯受賞黒豚とある。競馬やサッカー以外にも天皇杯ってあったんだ・・・と思いながら説明を読む。純粋黒豚75%茶毛豚25%を交配?黒豚100%を超える究極の霜降り???
なんとなく胡散臭い説明だ。
そもそも黒豚という表記はパークシャーの純粋種のみで許されており、交配した黒豚は黒豚と表記してはいけないことになっている。それに黒豚は他種と交配しても、純粋種を超えることが難しく、あまり成功していないと聞いている。
純粋の黒豚でないのは気にかかるが、ここは食べてみねばなるまい。
「スーパーとんかつ定食」の一択。サイズは超厚切り〈特大〉と行きたいところだが・・・念のため注文を取りに来たお姉さんに聞いてみた。
「超厚切り〈特大〉は肉は何グラムですか?」「300グラム・・・以上・・です。」
300グラム・・・以上?・・・以上って何?350? 400?
自信無さげな、間を取りながらの答えだっただけに迷ったが、確認して下さいと言うのも気が引ける・・・
しかし最小の300gとしても大阪の「とんかつ 大喜」の「特選ロース 超厚切り(300g)」と同じ・・・昼食に持ってくるのは自殺行為だ。ギリ完食できても、午後の会議が終わる・・・ならば、
「〈大〉は何グラムですか?」 「250・・・から300・・・」
何故そんなに幅がある・・・
心の中で天を仰いだが、いつまでも迷っても仕方ない。「じゃあ「スーパーとんかつ定食」の〈大〉でお願いします。」
一息ついてメニューを改めてみると、バラエティ豊富でランチもかなり充実している。
隣の席にランチが運ばれてきたが、数種類の揚げ物に加えてカレーもついており、かなりのボリューム。がっつり系で人気の店のようだ。
メニューを見ながらあれこれ想像していると、待つこと10分あまりで大きなお盆に乗ったスーパーとんかつ定食がやってきた。
自称頑固の親父さんが威勢と勢いで作った一品という感じである。前回の「のもと家」の店主の繊細な仕事ぶりと対照的だ。
金網の上に雑然と広がった7切れのとんかつ・・・左4枚の断面を見せて右3枚はそのままなのはなぜだろう・・・断面には衣のカスが乗り、皿の縁は油で汚れている。それよりも・・・
皿の右上のサンドイッチは何?・・・これはメンチカツ???
「すみません、これは?」「メンチカツサンドです」それはわかっているが・・・
「頼んでないんですが・・・」「あ、サービスです」
サービスと来たか・・・正直ちょっと引いた。
とんかつ定食を完食した後にメンチカツサンドを食べたいと思う客がどれほどいるだろうか?
タダなんだから困る人はいないと思っているかもしれないが、注文したものを残したくない私のような者にとってはありがた迷惑であり、不要なものを付けてサービスと言われるのは違和感がある。
まあしかし、これぐらいならなんとか食べきれるだろう、と気を取り直してとんかつに向き合うことにした。
見えている断面はうっすらとピンク色で、火入れ具合は良い。肉汁がキラキラと光っており、見るからに旨そうだ。衣は硬めに揚がっている感じである。
右側の2切れの断面が、やけに凸凹している。よく見ると肉の端の方に隙間もある・・・刃が丸くなった包丁で押し切るように切ったのだろうか?
卓上に塩が無かったので、塩を出して貰った。まずはそのまま一口かぶりつくと、柔らかいが、厚切りの為みっしりとした噛み応えがあり、ジューシーで旨い。
塩を振って更に食べ進める。肉の味も黒豚との交配のせいか、通常の三元豚よりも旨みがある。黒豚と同等とまではいかないが、近い味に思える。ツッコミどころは多かったが、なかなか旨いとんかつだ。
2切れ、3切れと食べ進むうちに、かなり脂身が多いことに気がついた。ぱっと見ではわからなかったが、通常のロースカツと同様、断面の端、写真で言えば上の部分に脂身があるが、それ以外の赤身の部分にも脂が細かく入り込んでいる感じだ。
メニューをよく見ると究極の霜降りと書いてある・・・これはこれで旨いが、なかなかのボリュームに加えて脂身の多さはお腹に溜まる。脂が多いのが苦手な人は他のメニューを選んだ方が良いかもしれない。
ガッツリ食べて満足したが、まだメンチカツサンドが残っている。仕方ない・・・という感じで手を伸ばしたが、意外にすんなり入った。たっぷり食べたとんかつ+ご飯に上乗せするのではなく、別腹に入った感じだった。
だからといって、冷めたメンチカツはさほど美味しかった訳ではなく、私にとってはメンチカツサンドを無くして少しでも値段を下げてもらったほうが有難いと思う。
とんかつ自体は肉に旨みがあり、美味しかった。今度金沢に来た時はもう一度訪ねてみたい・・・そう思っている間にも、おまけのメンチカツサンドが次第にお腹に効いてきた。
午後の会議は香林坊で13時からだ。駅を挟んで反対側なのでここからはかなりの距離だが、時間はある。
腹ごなしにちょうどいい。歩いて行こう、金沢の街並みに浸りながら・・・
※後日、この「本家とんとん亭」を訪問した際、この日に食べたのは「スーパーとんかつ定食」〈中〉であることが判明した。レシートの値段も〈中〉の値段である。
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